石川県精神保健福祉協会シンポジウム

テーマ:「子どもの豊かな育ちのために」
【日時】平成24年2月11日(土)13:30~15:30
【会場】石川県こころの健康センター 2階 研修室
  (〒920-8201 金沢市鞍月東2丁目6番地)
【対象】どなたでも,無料でご参加いただけます

【プログラム】
1.「この子に吃音があるかもしれないと感じた時,どのように対応すればよいか」
    小林 宏明(金沢大学 学校教育学類)
2.「子どもに障害があることがわかった親をどのように支援すればよいか 」
 -新生児聴覚スクリーニング検査で発見された聴覚障害乳児と保護者の支援から-
    武居 渡(金沢大学 学校教育学類)
3.「生活世界での行動を通して内面世界を形成する教育と大人(教師・親)の役割 」
 -アスペルガー障害児との5年間の関わりから得られたこと-
    杉江 哲治(石川県立ろう学校)・吉川 一義(金沢大学 学校教育学類)

司会:荒木 友希子(金沢大学 人文学類・子どものこころの発達研究センター)

 目の前にいる子どもに何らかの問題を感じたとき,われわれはその子にどのように関わればよいのでしょうか。子どもの育ちには,保護者だけではなく,保育士,幼稚園教諭,学校教員といった多種多様な専門職の方々も大きく関わっています。また,近年では,専門職員と保護者との連携,専門職員相互の連携など,さまざまな試みもおこなわれつつあります。このシンポジウムでは,特別支援教育を専門にする先生方から,「子どもが豊かに育つために,われわれはどのようなことができるのか」という問題について,分かりやすくお話いただきます。特別支援を受ける子どもだけではなく,通常学級に通う子どもの育ちに関わる方々にとっても,大変有意義なお話であると思われます。皆様,どうぞ奮ってご参加ください。

シンポジウムのチラシ平成24年2月11日pdf

3年生の結果発表会

 昨日,3年生の結果発表会がおこなわれました。みなさん,パワポを使ったプレゼンはとても上手でした。はじめて心理学の研究を自分で計画し,実行した3年生,よくがんばっているなあと思いました。少し惜しいなあと思ったのは,研究目的に至る過程をうまく説明しきれていない人が多かったことです。先行研究では何が明らかとなっているのか,何が明らかとなっていないのか。このことを話してもらわないと,研究の意義が伝わってきません。1年後の卒論発表会に期待したいと思います。

また,今回はじめて図書館のAV室をお借りしました。とても座り心地の良い椅子で,タイマー・ベル係になっていなければ寝てしまいそうなくらいでした・・・。

演習

今期は,全員が必ず英語を訳してきて,レジュメを持ち寄り,5人前後のグループで討論し,黒板に要約を書き出す,という作業を授業中に行っています。5回の授業でようやく一つ目の論文が終了しました。これまでの演習では,他の人が訳してきたものをただ聞くだけでしたが,自分で英語に目を通してみると,理解できているところとできていないところが明確になり,議論を通じてより理解が深まるようです。

次回からは,以下の論文を読み進めていきます。ポジティブ心理学の論文で,認知心理学や感情心理学の知見を活かした実験研究です。毎回訳してくるのは大変だと思いますが,頑張っていきましょう!

Fredrickson,B.L., & Branigan,C. (2005). Positive emotions broaden the scope of attention and thought-action repertoires. Cognition and Emotion, 19, 313-332.

北陸心理学会第46回大会

富山大学にて,北陸心理学会第46回大会が開催されました。研究発表,座長,事務局,といろいろありましたが,無事に終わってよかったです。小牧先生もお越しくださり,多くの研究発表に積極的にコメントしてくださって,大変勉強になりました。来年は金沢大学で開催されます。

後期が始まりました

今日から,後期の演習(学類共通英語1)が始まりました。今回は,テキストではなく,論文を取り上げることにしました。臨床心理学に関する実証的な研究論文を読み,理解することを演習の目的としました。また,これまでのように,誰かが訳してきたのをただ聞いているだけだと意味がないと思い,受講者全員が毎回英語に目を通して訳してくる,というスタイルにしてみました。学生さんには負荷が高くなって大変でしょうか?? はじめての試み,うまく進むといいのですが。

まずはじめに,セリグマンの古典的な論文を読みます。学習性無力感理論の出発となる動物実験です。あまりにも有名で,心理学の概説書によく載っている研究のため,かえって原著にあたることがないかもしれないと思い,取り上げました。 

Seligman,M.E.P., & Maier,S.F. (1967). Failure to escape traumatic shock. Journal of Experimental Psychology, 74, 1-9.

2年生21名,3年生3名,4年生1名,院生1名,の受講者となりそうです。学類共通英語1なので,2年生だけだと思っていたのですが,単位はいらないけど聴講するという3・4年生もいてちょっとびっくりしました。また,2年生の勉強になると思い,psycINFOを使って文献検索をして,論文を入手することからはじめてもらいました。半期でいくつ論文を取り上げることができるかわかりませんが,できるだけ多くの論文を読めるよう,がんばっていきましょう!

 

おめでとう

4年生から,「公務員試験に合格しました」,「就職先が決まりました」という報告がいくつもありました。4年生の皆さんがそれぞれ自分の目標に向かって,一生懸命頑張っているのを見ていたので,いい結果となって努力が報われたこと,とっても嬉しかったです。心から,おめでとうと伝えたいです。

サマー・カンファレンス

日本発達心理学会ソーシャル・モチベーション研究分科会のサマー・カンファレンスが京都の同志社大学今出川キャンパスで開催され、5年ぶりに参加してきました。

私は二日目の午後に行われた研究発表会の指定討論の任務を仰せつかりましたが、あまり詳しくない研究3つに対してのコメントは、やっぱり難しかったです・・・ しどろもどろになってしまいました。自分の考えをゆっくりとわかりやすく丁寧に他者に伝えるスキルをもっと身につけないといけないと痛感させられました。

普段は、刺激のない生ぬるい状況に身をゆだねているため、こういった場にもっと参加する機会を作らないといけないと改めて感じました。そのうち、指導する学生さんと一緒にサマカンに参加できるようになったりするのでしょうか・・・・・

院生時代から親しくさせてもらっている他大学の同世代の研究者たちと久しぶりにお会いすることができ、楽しい時間を過ごすことができました。院生だった私たちがそれぞれ大学に就職し、家庭を持ち、育児をする立場になり、お互いに大きく環境が変化していますが、研究に対する思いは変わらず、タイムラグを感じずに昔と同じように話をすることができたことは本当に嬉しかったです。また、金沢では決してできない、動機づけ研究の熱い議論に参加させてもらい、大いに刺激を受けました。非常に充実した嬉しい二日間でした。企画者の皆さん、ありがとうございました。

高大連携講座

お盆明けの8月17日、金沢大学角間キャンパスにおいて、高大連携講座の人文学類心理学コースの講座をはじめて担当する機会を得ました。滋賀県立虎姫高校の生徒の皆さん38名を対象に、「科学としての心理学」をテーマに3コマの講義をおこないました。大学では高校と違って自分自身で考えることが重要であることから、高校生の皆さんにも自分で考えてもらうように工夫して講義を準備しました。

1コマ目は、「心理学についてどのくらい知っていますか?」というテーマで講義を進めました。事前学習の課題として私が用意した7つの質問に対して、高校生の皆さんにあらかじめ調べていただき、その成果をパワーポイントを用いてプレゼンテーションしてもらいました。いまどきの高校生はパワポも使いこなせるのですね。どのグループも、インターネットで調べた情報をきちんとまとめて報告できていました。自分たちで考えて出した結論について、講義の中で私が説明することによって、心理学が科学であることを実感してもらえたのではないかと思います。

2コマ目は、認知心理学の実験を体験するというテーマで、ストループ効果の実験をおこないました。二人ペアになって、実験者、実験参加者の両方を経験してもらいました。ストループ効果を実際に体験した後、なぜこのような現象が起こるのか、各自で考えてもらい、何人かの生徒さんに発表してもらいました。心理学用語は知らなくても、日常生活で経験していることをふまえてそのメカニズムを説明しようとしていた生徒さんが多かったです。力のある高校生たちだなあと感心しました。

3コマ目は、臨床心理学の実験を体験するというテーマで、ポジティブ心理学や感情心理学の実験を紹介し、フレドリクソンの理論のデモをおこなってみました。ここでは、むやみに臨床心理士を目指してほしくないという願いを込めて、あえてカウンセリングのような臨床的なものは取り上げず、科学としての心理学を認識できるような応用実験を紹介することにしました。

講義後の感想を拝見すると、おおむね好評だったようでほっとしました。特に、自分でストループ効果を実際に体験したことは強く印象に残ったようです。3コマ連続して講義を担当するのははじめての経験だったので、さすがに疲れましたが、「金沢大学に入ったらまた荒木先生の講義を受けたい」という感想に救われました。虎姫高校の皆さん、貴重な機会をありがとうございました。

 

 

2011年度前期,終了しました

2011年度前期の授業がすべて終わりました。

共通教育の「ポジティブ心理学」は,はじめて200人を越える講義だったため,非常に不安でしたが,なんとか無事に終えることができました。今週の最後の講義では,先週おこなった学習性無力感実験の解説の続きで,燃え尽き症候群の説明をしました。受講生には学校の先生や医療・福祉関係の仕事に就く可能性のある人が多かったので,社会にでてから使える知識を,と思い,そのような内容にしましたが,はからずも講義全体の総まとめのような感じになりました。自分ではそういうつもりはなかったのですが,感想を読むとそのように受けとった学生さんが何人かいました。なるほどなあと関心しました。

人間にとって絶対というのは死ぬことしかない,とか,あきらめることも時には必要,とか,目に見える分かりやすい随伴性認知を,などと,えらそうなことばかり話てしまいました。この講義で話したことを実践できているかと問われると,実は辛いものがあります。自分だってちゃんとできてないのに・・・と内心で思いながら,話をしていました。ごめんなさい。

今週の感想では,「今日の講義内容が今の自分にあてはまりすぎて,泣きそうになった」,「学んだことを実践しています」,「人生の糧にしていきます」などありました。学生さんの心に響いたものが多少はあったようで,ほっとしました。とにかく,この講義のプレッシャーは大きかったです。準備も大変でした。でもおかげで,はじめてフレドリクソンの論文を読むなど,私自身も大変勉強になりました。ありがとうございました。

人文学類の「臨床心理学演習」では,今日最後の授業で,なんとか無事にテキスト第3章を読み終えることができました。診断とアセスメントについての章を読みましたが,私には当たり前のことが書かれていて,個人的にはあまり面白くありませんでした。そのため,できるだけグループワークを取り入れて,自分で考えてもらうように試みました。私には,学生さんの話の方がよっぽど面白かったです。感想を読むと,学生さんにとってはこのテキストは良かったという意見が多かったので安心しました。日本語の教科書よりも広い視点で学べるため,臨床心理学をこれから学んでいく学生さんにとっては良いテキストなのかもしれませんね。しかし,アメリカンな例が面白かったという意見もあり,逆にアメリカンなところがわからなかったという意見もありました。後期の演習はどうしましょう? このテキストを使い続けるか,今後の検討課題です。

また,今期は,毎回授業の最後にコミュニケーションカードを書いてもらうという初めての試みをしました。当初はそんなつもりはなかったのですが,はからずも出席確認も兼ねてしまいました。おかげで皆出席できたという感想もありました。私にとっては,毎回学生さんの理解度を知って,次の授業に活かせることができて非常に良かったです。この方法はこれからも使おうと思います。

人文学類の「情報処理基礎」で担当したプレゼンテーション・ツールの講義では,学生さんたちのプレゼン能力の高さに驚かされました。聴衆に伝えたい,訴えたい,アピールしたいというなんらかの目的をもって,積極的に手を挙げてプレゼンをする学生さんが今年は特に多かったという印象が残りました。来年はどんなふうになるのか楽しみです。

試験期間がお盆休み直前まで続き,今の学生さんは大変ですね。皆さん,試験を乗り切って,よい夏休みをお迎えください。

Fredrickson & Branigan (2005)

今日の「ポジティブ心理学」では,ポジティブ感情とネガティブ感情の機能について話しました。ポジティブ感情の拡張ー形成理論を提唱したフレドリクソンのおこなった実験(Fredrickson & Branigan,2005)を説明する前に,感情操作の簡単なデモンストレーションをおこなってみました。はじめてやったのでうまくいくか心配でしたが,感想を読む限りでは,ポジティブ感情を喚起させて思考が広がったことを実感できた学生さんが多かったようです。自分のネガティブなところを克服したい,ポジティブになる方法を知りたい,という動機づけでこの講義を受講した方が多かったのですが,今日の講義を通じて,ネガティブ感情・ポジティブ感情のそれぞれに役割があること,だからこそネガティブさを克服しようとするのではなく,両方のバランスを保つのが大切であることを今回理解してもらえて良かったです。次回は,ネガティブ感情・ポジティブ感情の黄金比,ネガティブ感情との上手なつきあい方についてお話しようと思います。その後は学習性無力感理論,防衛的悲観主義の話をして,この講義をおしまいにしようと思います。あと5回です。先が見えてきました!