臨床心理学をやりたいと息巻いていた大学3年生の時,興味の持てる実験テーマがみつからず,当時心理学研究室の主任教授であった小牧純爾先生の部屋へ相談に 行きました。小牧先生はおもむろに本棚から一冊の本をとりだし,「こんなのはどうですか」と私に差し出してくださいました。その本は,学習性無力感理論を 提唱したセリグマンの著書「うつ病の行動学」でした。これが,私と学習性無力理論との出会いです。その時以来,私はシンプルでダイナミックな学習性無力感 理論に魅せられ,大学3年の課題である実験レポート,卒業論文,修士論文,博士論文,すべて学習性無力感理論に関する研究をおこなってきました。
私たち人間は,生きていく中で様々な出来事に直面します。しかし,どんなにつらい出来事や悲しい出来事に直面したとしても,深い無力感や絶望感に陥らず,心 の健康を保てる人がいます。無力感におちいる人とそうでない人の違いは何だろうか。このメカニズムについて解明するため,学習性無力感理論をもとに,実験 的手法および質問紙調査法を用いて研究をおこなっています。依然として自殺する方が多く存在する日本の現状において,自殺につながるうつ病に陥らないよう にするにはどうしたらいいのか,考え続けていこうと思っています。
主な論文
- 荒木友希子 2000教示による原因帰属の操作が学習性無力感に与える影響 心理学研究, 70, 510-516.
- 荒木友希子 2003 学習性無力感における社会的文脈の諸問題 心理学評論, 46, 141-157.
- 荒木友希子・山口瞳 2013 数学に対する苦手意識が計算問題における学習性無力感現象の生起に与える影響 心理学の諸領域, 2, 29-37.